中小企業X社のA社長から特許出願のご相談。
対象となる発明は、A社長が個人的に直感的に思いついたものでした。
現在の事業内容と関連はあるものの、顧客ターゲットや差別化ポイントがまだまだ不十分で、果たして売れる商品になるか不安に感じました。
その点を社長に素直にお話したところ、
「失敗してもいいからとにかく商品化したい。特許出願は進めたい。」
とおっしゃいます。
特許出願にはコストがかかります。そのため、「売れなくてもよいものを保護する」という考えは一般的ではありません。
更にお話を伺うと、以下のような社長の真意が見えてきました。
①大きな投資にはならないので、リスクが大きいとは思わない。
②下請け体質の企業なので、オリジナルの商品が欲しい。
③新しいことにチャレンジすることで、社員のやる気を引き出したい。
なるほど納得ですね。戦略的に知的財産を活用したいということです。
ただし、①については、機会損失(オポチュニティーコスト)が発生することに留意しなければなりません。その開発をすることによって、別のもっと売れる商品を開発をする機会が失われます。
また、③については、単に特許出願に取り組むだけでは、やる気を引き出すのは難しいかもしれません。そのために例えば以下のような実践可能な仕組みを構築しなければなりません。
①社長が、知財重視でいくことを社員に対して明確に宣言する。
サラリーマン経験のある私は、これが結構重要だと思います。社長の明確な意思表示がないと、社員は「面倒くさいな~」と感じながら消極的な対応をすることになります。社長のこの意思表示は、社員がいつも目にするように言語化(見える化)した方がよいでしょう。朝礼で一回宣言したところですぐに社員は忘れてしまいます。言語化することで社長が本気であることが伝わります。
②アイデア等を提案することについて、何らかの報奨制度を設ける。
こちらについては、アイデア提案とまで言わずともQC等の改善活動として取り組んでいる中小企業は多いように感じます。
ご相談いただいた中小企業X社は、新商品のネーミングの案を提案した社員に対しても報奨金を支払っているそうです。社内活性化という観点から、参考になる取り組みだと考えます。
③アイデアを提案する社員に高い評価を与えるような評価制度に変更する。
アイデアを積極的に提案する人に高い評価を与えることが、①、②との整合性にも繋がります。②がその都度の単発的(短期的)な視点での仕組みであるとすれば、こちらは、長期的な視点での仕組みであるといえるでしょう。
これらの仕組みはあくまでも一例です。各中小企業によって異なりますので、どのような仕組みにするか、知恵を絞らなければなりません。
何れにせよ、下請け体質の中小企業が、知財活動を戦略的に活用するのは、素晴らしい取り組みと思います。
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