企業知財部に在籍していたとき、知的財産権の権利化業務に携わる一方で、「この技術、特許出願しなくても模倣されないのでは?」などというモヤモヤした疑念が常に頭の片隅にありました。
同じ想いの中小企業経営者や知財担当者の方も多いと思います。
しかし、この疑問に対して、明確な回答をもっています。
「技術内容によってはその通り。」
競合他社に対する参入障壁は特許権だけではないからです。
ノウハウ、組織、関係企業とのネットワーク、部品の調達先など様々な要素が存在します。その社内にしかない固有の経営資源(他社に真似できない理由)が特許以外にも存在することも多いのです。
もちろん、特許権が固有の経営資源の一部として強力な参入障壁を形成することもあります。
では、知的財産なんて意味がないのでしょうか?
そのようなことはありません。
ここでは、時間がない中小企業経営者の方に、知的財産活動の多様な活用方法をダイジェストで8つご紹介します。
1 無形資産を“見える化”する
目に見えない状態であった無形の資産が、発明等を発掘する作業を通じて、文章や図表などの形で、知的財産として明確に“見える化”される効果でです。
本効果により、例えば、下請け企業が自社技術を明確に把握し、提案型の企業に転換するためのきっかけをつかむことができます。
2 無形資産を“財産化”する
知的財産活動に取り組み、技術開発やデザイン活動の成果や良く知られるようになったロゴマーク等の知的財産を、生み出した企業の特許権、意匠権、商標権として登録することによって、それらの知的財産権が企業の財産となるという効果です。
本効果によって、例えば社員が独立(退職)したことにより技術が流出することを抑制できます。
3 創意工夫を促進して社内を活性化する
知的財産活動に発明者等への報奨制度を絡めることによって、社員のやる気、創意工夫を促し、社内を活性化する効果である。知的財産活動による人材育成の効果も本効果に含まれます。
4 競合者間における競争力を強化する
独自製品の特徴となる要素を知的財産権で保護して競合他社と差別化し、オンリーワン企業の地位を確立するという、知的財産活動の典型的な効果です。
5 取引者間における主導権を確保する
自社製品に関連する知的財産権を確保し、例えば価格決定の主導権を握ることによって、販売相手との関係で優位に立つ効果です。
6 顧客の安心を保障する
自社製品について知的財産権を取得しておくことによって、他社知的財産権を侵害してしまう可能性を低減し、顧客に安心して自社製品を購入してもらう効果です。
7 自社の強みを顧客に伝える
知的財産権を取得し、顧客に対して自社製品の先進性や独自性をPRする効果です。
8 協力関係をつなぐ
対象となる技術を特許権という形で明確にし、明確になった技術に基づいて他社との協力関係を構築する効果です。
自社の経営にも活用できるかも、とお考えになった中小企業経営者の方、一緒に勉強しましょう。経営者は学び続けなければなりません。
詳細については、下記資料を参考にしてください。
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知的財産活動の効果を7つに類型化(言語化)した、自分にとって衝撃的な一冊です。
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